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4. 高尾のはちみつを使ったお菓子作り
-ドゥミセック編-

―前回のあらすじ―
グランシェフパティシエ・鈴木の想いが込もったはちみつクッキーはまもなく完成間近。一方、たまプラーザ店のシェフパティシエ・山本が担当するドゥミセック(半生菓子)は…?作業現場に密着します!
アトリエうかいは、うかいグループの鉄板料理店・うかい亭で振舞われていた食後のデザートが評判となったことから誕生した洋菓子店。
いまではブランドの代表商品となっているクッキー缶の他にも、うかい亭時代から提供していたデコレーションケーキやプリンなどの生菓子、フィナンシェやマドレーヌなどのドゥミセックも取り扱っております。
アトリエうかいの「プティフールシリーズ」は、たまプラーザ店やエキュート品川店で販売しているドゥミセックの詰め合わせ。季節のシーンを彩るお菓子として、これまでバレンタインや四季に合わせてシリーズでお届けしてきました。自分へのご褒美や大切な方とのティータイムのお供として好評をいただいている商品です。
このプティフールシリーズを手掛けるのは、たまプラーザ店の山本。L’ABEILLEの養蜂場で採蜜体験に参加したパティシエの一人です。
「これまでもレンゲやアカシアのはちみつなどをお菓子の材料として用いてきましたが、特別に産地にこだわりを持って選んでいたわけではありませんでした。今回の採蜜体験を経て、東京・高尾山で採れるはちみつの美味しさへの驚きと共に、都会のイメージが強い東京で、はちみつを介した地産地消が行われていることに感銘を受けたのです」
 
L’ABEILLEの「東京はちみつ」を生かしたお菓子を作るにあたり、プティフールシリーズに取り入れてみたらどうだろう?と思いついた山本。
「焼き菓子でありながらも、レストランのデザートのような生菓子を思わせるジューシーな味わいに仕立てることで、はちみつの魅力が前面に出るお菓子が出来るのでは?」
色々なアイデアを試していきながら、〝はちみつが主役〟のドゥミセックを作ってみようと意気込むのでした。
ある晴れた日、高尾山に咲き誇る無数の花々と、そこに群がる元気いっぱいのミツバチたち。
高尾の養蜂場で目にした光景をお菓子のデザインに昇華させるため、イメージをデッサンしていきます。
 
アトリエうかいのドゥミセックは、良質な素材を選び抜き、パティシエが丁寧に焼き上げることで素材本来の美味しさを余すところなく引き出しているのが魅力。
そこにはちみつを取り入れるのには、どのような方法がベストなのか?
生地に混ぜたり、染み込ませたり。あるいは、上から掛けてみたり…。色々な手法が山本の頭に浮かび上がります。
チョコレート等を用いて、ミツバチやお花をイメージしたデコレーションパーツも一つひとつ丁寧に作っていきます。
まず、制作に着手したのは「フィナンシェ」。
アトリエうかいのフィナンシェといえば、ほどよく焦がしたバターの豊かなコクが魅力。
その風味を生かしながらもはちみつの良さを引き立てるために、シンプルにフィナンシェ生地にハチミツソースを重ねる2層構成がベストだと思い至りました。
今回考えたフィナンシェは2種類。「フィナンシェ ミエル」は、しっとりと口どけのよい生地に春の百花蜜を合わせた、はちみつの味わいがダイレクトに伝わる一品です。表面にはとろりとなめらかな口どけのはちみつソースと、ハチの巣をイメージしたチョコレートを飾りつけました。
 
「フィナンシェ テ アグリューム ミエル」は、はちみつを溶かしたフルーツティーの味わいを意識したフィナンシェ。紅茶風味の生地をしっとり焼き上げ、爽やかに香る初夏の百花蜜とオレンジジャムを使用したソースを重ねました。表面にはアクセントとして、甘酸っぱい柚子のパートドフリュイをデコレーション。幾重にも広がる香りと余韻が楽しめる、はちみつと柑橘のハーモニーが魅力の一品です。
次は、アトリエうかいで人気の高い「マドレーヌ」にはちみつを合わせた2種の焼き菓子を作ります。
発酵バターの豊かな香りと、選び抜いた地卵の濃厚な味わいが贅沢に広がるマドレーヌ。生地にはちみつを混ぜ込み、焼き上がりにもはちみつシロップを染み込ませることで、マドレーヌの芳醇な味わいと共にはちみつの風味をしっかりと楽しんでいただけるのでは?と山本は考えました。
 
「マドレーヌ ミエル」は、生地にも焼き上がりのシロップにも春の百花蜜を使用しました。口にした瞬間、春の花々の優雅な香りが漂います。中心部はふんわりしっとりと、縁の部分はカリッと焼き上げることで、食感のコントラストも堪能できる一品に。
 
「マドレーヌ マロン」は、コク豊かな夏の百花蜜を使用した生地に、ラム酒漬けのマロングラッセを包みしっとりと焼き上げます。栗の形をモチーフにした、見た目にも秋を感じるマドレーヌです。焼き上がりに夏の百花蜜とはちみつのお酒等を混ぜ合わせたシロップを染み込ませることで、薫り高い余韻を醸す味わいになりました。
これらのドゥミセックは、前回のコラムで触れた「クッキーサンド」と共に詰め合わせ、「プティフール ミエル クッキーサンド&ドゥミセック」として販売する予定です。
山本とグランシェフパティシエの鈴木が力を結集して作り上げた味わいを、ぜひ楽しみにお待ちください!
次回は、
はちみつを使った「プリン」の制作過程に密着。
トリエ京王調布店・内藤が、
同店の看板商品であるプリンを
どのようなアレンジで
百花蜜の魅力が
活きた一品に仕立てていくのか?
アイデアを練り上げながら
完成に至っていく様子をお伝えします。