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3. 高尾のはちみつを使ったお菓子作り
-クッキー編-

―前回のあらすじ―
はちみつ専門店を営むL’ABEILLEの採蜜作業場にて、貴重な採蜜体験をさせてもらったパティシエたち。お土産にいただいた“百花蜜”を使って、秋の新作スイーツの試作を進めることに…。

希少なはちみつを持ち帰った先は、東京・八王子にある「アトリエうかい 八王子工房」。2015年に設けられた、アトリエうかいのクッキーの生産拠点です。ここから各店舗やオンラインショップ等でご購入されたお客様のもとへ商品をお届けしています。
 
安全・安心なお菓子を、皆様に楽しんでいただくために。八王子工房では、食品の安全管理を実践するための国際規格「ISO22000(※)」の認証を受け、食品安全管理のガイドライン(HACCP)に基づいた生産を行っています。
※「ISO22000」は、スイス・ジュネーブに本部を置く国際標準化機構(ISO)が定めた食品安全のルール。食品に関する製造から供給までのすべての過程で、食品危害を防ぐための厳格な国際標準規格です。
この時に持ち帰ってきたはちみつは、採れたばかりの百花蜜。
 
L’ABEILLEの百花蜜は、高尾山麓や八王子市に点在する自社の養蜂場で春・初夏・夏に採取され、「東京はちみつ」という名称でL’ABEILLE店頭やオンラインショップで販売されています。
 
同じ場所で採れたはちみつでありながら、採取する時期によって風味も色も三者三様。季節の移ろいと共に蜜源も変わることから、見た目にも味わいにもはっきりとその違いがあらわれます。
 
春の百花蜜は桜や藤、菜の花の華々しい香りを含んだふくよかな甘さが特徴。
初夏はアカシアやトチ、ユリノキから採れる穏やかな香りとまろやかな甘みを感じ取れます。
夏はクローバーや栗から採れる、香ばしくコク深い味わいが魅力。
 
ミツバチがたくさんの花々から集めてきた蜜は、その季節ごとに個性あふれるはちみつとなって私たちを楽しませてくれるのです。
 
L’ABEILLEのはちみつを使ったお菓子作りに取り組むにあたり、この「東京はちみつ」3種それぞれの個性を生かしてみたら面白いのでは?と思いついたシェフたち。
採蜜体験を通して得た、“はちみつはミツバチがもたらした自然の恵みそのものである”という実感をもとに、3種のはちみつを用いてどのように表現するのがベストなのか?
アトリエうかいのスタッフたちと共にアイデアを描き始め、今回はL’ABEILLEコラボレーション商品ラインナップとして、クッキー・ドゥミセック・プリンを作ることに。

まず試作に着手したのは、はちみつクッキー。
クッキーはアトリエうかいの定番商品としてよく知られていますが、そのルーツはうかいグループのレストラン・うかい亭から。コースの最後にお出ししていたクッキーやフィナンシェなどの小菓子が評判になり、「家でも食べたい」とお客様からお声をいただいたことをきっかけに、2013年にアトリエうかいをオープンいたしました。
オープン当初から看板商品として掲げ続けているクッキーの詰め合わせ「フールセック」は、今ではアトリエうかい店舗やオンラインショップ、全国各地でのデパート催事等を通してたくさんの皆様に愛される存在となっています。 
 
はちみつクッキーを作るにあたり、グランシェフパティシエの鈴木が大切にしたかった想い。それは、“百花蜜”の魅力を最大限に活かすこと。

「これまでのお菓子作りでは、単種の植物から採れたはちみつばかりを使ってきました。レモンやオレンジ、栗やりんごなど、蜜源そのものに価値を見出していたためです。
今回のL’ABEILLEの養蜂場見学と採蜜体験を通して、百花蜜ならではの季節によって変わる味わいや香り、高尾地域ならではのテロワール(地域性)を肌で感じることができました。そこで百花蜜の特徴や価値観がお客様に伝わる商品づくりをしたいと思い、L’ABEILLEの『東京はちみつ』を主役にしたお菓子を作ることにしたのです。」
そして考え抜いた末に生まれたのが、はちみつを使った3種類のディアマンクッキー。
「クッキーアソルティ はちみつ」は、春に採れる百花蜜と風味高いバターのハーモニーを楽しめる味わいに。
「クッキーアソルティ はちみつカカオ」には春・夏の百花蜜をブレンドして使用。はちみつと非加熱のピュアなカカオの風味が互いに魅力を引き立て合う一品に。
「クッキーアソルティ はちみつ紫芋」は、春・夏の百花蜜をたっぷり絡めた“大学いも”をイメージしたクッキーに。
 
砂糖よりも水分の多いはちみつを材料に使う場合、クッキーにした時に食感が固くなりがちです。そこでフラワーバッター法(やわらかくしたバターに小麦粉を混ぜることで、気泡を取り込み生地を膨らませる方法)を採用することで、さっくりとした軽い食感に仕立てました。どのクッキーも、口にするとはちみつとバターの風味が豊かに広がります。いずれも自信を持っておすすめできる一品になりました!
また、3種のうち「はちみつ」と「はちみつカカオ」は、2種の限定詰め合わせ箱でもご用意する予定です。高尾の豊かな自然をイメージしたレリーフと、はちみつを思わせる柄や色合いを取り入れた愛らしいパッケージを目下、製作中…。ぜひ楽しみにお待ちください!
はちみつを使ったドゥミセックの詰め合わせも同時に試作中ですが、その中にも繊細なクッキーを用いた2種のクッキーサンドを加える予定です。素材を活かしてシンプルに仕立てた「クッキーアソルティ」に対して、こちらはレストランデセールを思わせる贅沢な味わいに。しっとりとしたクッキーに百花蜜を使用したバタークリームをサンドし、表面にはジャムやはちみつソースを飾るイメージで試作中です。アトリエうかいのクッキーの世界をさらに押し広げるような、懐かしさの中にもどこか新しさを感じさせるお菓子に仕立てています。
百花蜜との出会いを経て、「こんなに良い素材と巡り会ったからには、その魅力を最良の形でお客様に感じ取っていただけるお菓子を作らなければ」と使命感を覚えた鈴木。
自身のこれまでの経験を活かしながら洋菓子としての表現を追い求め作り上げたのが、今回のクッキーアソルティとクッキーサンドです。
 
百花蜜の魅力と向き合っていく中で、高尾が誇る自然豊かな環境を知る機会にも恵まれました。
クッキーを通して百花蜜の美味しさを知っていただくと共に、花咲く高尾山にミツバチたちが舞う光景にも思いを馳せていただけるなら、これほど嬉しいことはありません。
 
次回は、
たまプラーザ店のパティシエ・山本が挑戦する
はちみつのドゥミセック作りに密着!
試行錯誤を重ねながら、華やかなお菓子たちが
完成していく様子をお届けいたします。