株主・投資家の皆様へ

MESSAGE

紺野俊也

株主・投資家の皆様におかれましては、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

2023年3月期の業績は、売上高でコロナ禍前に対しほぼ9割まで回復し、利益に関しては減資に伴う税負担の軽減などもあり、2019年3月期ぶりに当期純利益の黒字化を達成することができました。

レストラン事業部では経費構造の見直しによるコスト抑制、効率的な人員配置に加え、お客様の来店価値向上を目的にサービス・店舗環境の充実を図り、価格改定を実施しました。こうした取り組みも含め、改めてうかいのおもてなしがお客様にご評価いただいたことが前期比大幅増収につながったと考えています。

物販事業部では、「アトリエうかい」の新店舗を大阪難波にオープンし、多くのお客様に来店いただいているほか、既存店の売上高も大きく伸長しました。コロナ禍で需要を伸ばしたEC・外部販売も前年同様の水準で好調に推移しています。

文化事業部では、行動規制の緩和に伴い来館者数が伸長しました。企画展・イベントの効果もあり、前期から大幅な増収となっています。

株主の皆様への利益還元につきましては、当期業績を踏まえ復配を決定しました。投資とのバランスを勘案し、まずは1株あたり15円とさせていただきます。今後の事業成長により利益を創出し、継続的な利益還元を実現していきたいと考えていますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

中期経営戦略
ありたい姿の実現に向け、課題解決により事業基盤の構築・確立を図る

当社は「日本の食文化の発展に貢献できる成長性と収益性を兼ね備えた企業」というビジョンの実現に向け、2023年3月期からの3年間を「収益力、成長力向上に向けた事業基盤の構築期」と位置づけ、様々な取り組みを進めています。

◆ 体系的な教育プログラムで社員の成長スピードを加速
人の温もりが感じられるおもてなしは、うかいならではの強みの一つであり、「人材力の強化」は経営戦略上の最重要テーマです。

採用面については、新卒が毎年一定人数を確保できている一方、即戦力となる中途人材では、ジョブ・リターン制度の導入など様々な取り組みを進めているものの目標までは届いていない状態です。

こうした状況の下、中長期的な観点から新卒採用に重きを置き、採用できた人材を丁寧に育成するとともに成長した社員が長く勤めることができる職場環境の整備を進めることで、人材の確保・強化を図っていきたいと考えています。

育成の方法も、昔ながらのいわゆる「修行」寄りの観点から、体系的なプログラムの中で「自ら考え、自ら育つ」ことを促す「教育」を実践することにより、若手の成長スピードも確実に速まったと実感しています。

また、経営人材育成の一環として、管理職クラスの他店舗研修を一部で開始しました。人的資本強化の観点から専門性を重視して育成すべきとの考えもありますが、自らの専門を超え、複数の職場でさまざまな経験を積んでもらいたいと考えています。

◆ 意欲ある若者が成長を実感できる魅力ある職場づくり
当社は食を通して、お客様に最上のおもてなしをすることを追求しており、働く者が仕事に誇りをもてる環境であると自負しておりますが、それでも飲食業界自体に労働時間が長い、休日が少ないなど、ネガティブなイメージを持たれていると感じています。

このようなイメージを変えていきたいという思いもあり、2023年4月から週休2日の店舗を大幅に拡大しました。稼働日は少なくなりますが、より目の前のお客様に集中しておもてなしができるという点では、ご満足いただける体制を確保できていると考えています。また若手にとっても友人や家族との時間が増えるとともに、中身の濃い業務内容が早期上達の機会ともなっており、人材力の強化にもつながっていくものと確信しています。

さらに転勤希望を含む自己申告制度を導入し、実際に本人の希望に基づく異動も実施しています。こうした取り組みを発信していくことで一人でも多くの熱意を持つ方々が入社し、当社へ新しい風を起こしてくれることを期待しています。

◆ 従業員満足→ お客様満足→ 事業成長の好循環を
従業員の価値観も多様化し、もはや旧来の画一的な人事制度では通用しない時代になりました。経営陣はもちろん職場の上司には、従業員一人一人と真摯に向き合う「個性を生かすマネジメント」が求められています。

うかいの料理は、素材の味を生かすことでうかいならではの味を創り上げていくものですが、人についても同じで、それぞれ個性が異なる従業員に一つのルールを当てはめるような店づくりでは、お客様にとって、そして私たちにとってもつまらないお店しかできないでしょう。

組織である以上、ルール・制度は整えていかなければなりませんが、従業員が過度にルールに縛られ萎縮するようなことがないよう配慮する必要があると考えています。

当社は従業員一人一人が働きがいを感じるとともに自ら成長し、それをお客様満足、会社の成長へとつなげていきたいと思っています。これは一つのチャレンジですが、実現できれば当社は、お客様に感動を提供できる存在であり続けることができると確信しています。

◆ 新工房で「アトリエうかい」のブランド発信力を強化
「アトリエうかい」は『たまプラーザ店』オープンから10年が経過し、物販事業として総売上の約1割を占めるまでに成長しました。

今後は地域限定や季節限定、ショコラコレクションなど魅力的な新商品の開発、レストランとのコラボ企画、イベントなど積極的な話題づくりでファン層の拡大に取り組むとともに、新しい収益の柱としての成長に向けた不可欠な投資として、新工房の建設も検討しています。

現在の八王子にある工房の製造能力が限界に来ており、喫緊の課題となっています。

ただし、売上倍増を目指して従来と同様の工房を作るのではなく、例えばお菓子づくりを体感できる、できたての味を楽しんでいただけるなど、まったく新しい発想で多くのお客様に「アトリエうかい」のお菓子づくりを実感していただける空間創出を目指したいと考えております。

こちらはまだ構想段階であり、用地問題などハードルもありますが、更なるうかいブランド発信力の強化、知名度の向上につなげていきたいと考えていますので、楽しみにしていただければと思います。

◆ オンラインショップで冷凍食品の販売をスタート
オンラインショップ「UKAI GOURMET DELI」にて、4月より冷凍食品の販売を開始しました。「うかい亭」や「とうふ屋うかい」で料理長を歴任するシェフたちが、専用セントラルキッチンで調理から冷凍まで全工程を担う体制を整え、6月からメニューを倍増するなど、新業態として拡大を図っていく計画です。

コロナ禍で実施したテイクアウトの好評により改めてうかい製品への高いニーズを確信したこと、冷凍技術の向上などを勘案して開始した事業で、製菓とともに物販事業の成長に向けた取り組みの一環として期待しています。

◆ 3業態の有機的な連携により新しい取り組みに挑戦
当社は事業部制を採用しており、通常はレストラン・物販・文化という3つの業態に分かれてビジネスを展開していますが、3つの業態で当社は一つであり、業態間の交流を妨げる障壁は存在しません。

そこで、社内に3業態を有することを最大限に活かす新しい試みとして、『箱根ガラスの森』に併設するカフェレストラン『カフェテラッツァうかい』のメニューを、うかいのブラッスリーグループ総料理長監修でリニューアルいたしました。レストラン事業部と文化事業部が連携し、箱根の雄大な自然を前に特別な体験をご提供することで、美術館の価値向上に寄与しています。

今後も引き続き業態間の連携を強め、ビジネスの可能性を拡げるプロジェクトに挑戦していきたいと考えています。

サステナビリティ
お客様に新たな感動を提供し続けることで、100年先、200年先も成長し、輝き続ける企業に

当社は「100年続く店づくり」を理念に掲げ、創業以来一貫して持続的な事業成長を目指してきました。お客様・株主様をはじめ当社が目指す店づくりを支えていただいているすべてのステークホルダーの皆様との信頼関係を大切にしていくことが100年、200年と続く企業となるための道筋であり、単なる食事の提供にとどまらない、うかいならではのおもてなしでお客様に感動や喜びを提供し続けていくことが当社の存在意義であると考えています。

当社は食に関わるビジネスを展開する企業として、お客様の安心・安全・健康という観点から、これまで業務の中でサステナビリティに関わり、対応してきました。今後は当社の考え方、取り組みなどについてステークホルダーの皆様に透明性をもって発信し、ご理解いただくことが必要と考えています。改めてサステナビリティの観点から事業を整理・検討したうえで、順次開示してまいります。

株主・投資家の皆様へ
4月を迎え、新たな事業年度が始まりましたが、足下は前期を上回り好調を維持しており、いい形で2024年3月期をスタートさせることができたと考えています。

来年、当社は創業60周年を迎えますが、これからも理念・精神を継承しながら前に進んでいくために、事業基盤の構築に取り組んでまいりますので、今後もうかいをお引き立てくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。


代表取締役社長
紺野俊也
紺野俊也