株主・投資家の皆様へ

MESSAGE

大工原正伸

株主・投資家の皆様におかれましては、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

2019年3月期は順調にスタートしたものの、夏場の猛暑の影響などで郊外の一部店舗で来店客数が想定を大きく下回る状況となりました。後半の繁忙期は改善がみられるも上期の低調を吸収するまでには至らずに、第3四半期を終えて業績予想の下方修正を行いました。

郊外店は一部苦戦しましたが、一方で都心店は盛況で、予約が取れない状況が続いています。また物販事業でも2017年に開店した『アトリエうかい エキュート品川』と『アトリエうかいトリエ京王調布』の寄与が大きく、中長期の視点に立って積み上げてきた取り組みが実を結びつつあると感じています。

すべては「100年続く店づくり」に向けて

うかいが目指す「100年続く店づくり」。しかし100年続くためには、まずお客様に「なくてはならない存在」であり続けること、そして、そのために独自のしっかりした文化を持ち、常に磨いていくことが必要です。

では、うかいの文化とはいったい何でしょうか。私は「美味方丈」の世界だと考えています。お客様を一丈四方の空間にお迎えし、お客様と向き合いながら一期一会を大切におもてなしの心を表現することで「よかったね、また来ようね」という余韻を持ち帰っていただく──そこにうかいの存在意義があります。

いまの事業環境のもとで、どのような道筋で「美味方丈」の世界を構築し、目的達成につなげていくかを示すのが中期経営戦略です。当社では、戦略の基本方針として「人材の確 保・育成」「ブランドの研鑽」「物販事業の成長促進」「ブランド発信」の4つを掲げ、100年企業を目指して課題に取り組んでいます。

─ 人材の確保・育成 ─
うかいは「人」がすべて──
目的を共有する次世代を育て、想いを未来へつなげていく

「100年続く店づくり」は、当然ながら一人ではできません。想いのバトンを未来へと引き継いでいくために、次代を担う優秀な人材の確保・育成に注力しています。

おもてなしによりお客様に喜んでいただくことが、うかいの一丁目一番地。そして、うかいが目指すおもてなしとは、お客様の気持ちを察知して接客すること。それは人でなければできません。人手不足が続くなか、当社が属する外食産業では自動化などで要員を削減し、事態の打開を図ろうとする動きが主流となっています。しかし、うかいの存在意義は人によるおもてなしにあり、それを犠牲にするような削減は当社の選択肢にはありません

この2年間に新卒として180名を採用しました。長期的な視点で、いまこれだけの人数を採用し、時間をかけて育てていくことが必要と考えています。

教育・育成にあたり最も重視するのは、社員全員が目的を共有することです。内定者、新卒社員、中途社員、中間管理職、経営幹部など、あらゆる階層向けに研修を実施し、誰も が同じ言葉で目的を語ることができる状態を目指しています。

また、お客様に喜んでいただくためにも、従業員が前向きに仕事を続けられる環境づくりを進めています。定休日の導入・拡大、営業時間・ローテーションの見直しなど5年をかけて少しずつ改善を進め、当初目指してきたレベルは達成できたと考えています。しかし働き方改革は一朝一夕ですべてが解決する問題ではありません。引き続き社内の意識改革も含め、時間をかけてできることから進めていく考えです。

─ ブランドの研鑽 ─
都心から至近にある日本の原風景──
「商圏1万キロ」を目指し創業店『うかい鳥山』から発信強化

新規出店は大きなトピックスになりますが、「100年続く店づくり」のために、より重要なのは既存店の研鑽です。個々の店舗がしっかりお客様と向き合い、独自の歴史を積み重ねていかなければなりません。

2019年3月期は都心店が好調に推移する一方で、郊外店、特に八王子・高尾地区の集客が落ち込みました。上期に関しては天候が主な要因ではありますが、国内の人口減少を背景とする立地地域の空洞化も一部影響したと考えています。このままでは地域の地盤沈下とともに郊外店の収益が減少するのは必然で、この状況を克服するためには、各店舗で一段と商圏を広げていく必要があります。

今後は特に創業店『うかい鳥山』に焦点を絞り、時間をかけて商圏拡大に取り組んでいきます。新宿から約1時間の好立地、里山の風景、歴史的な背景を持つ越中五箇山の合掌造りなど、創業店の持つ資産の価値を改めて見直し、SNSによる情報発信、旅行会社との連携などを通じて店舗の発信力を強化。海外からのお客様にも広くアピールし「商圏1万キロ」につなげます。

また、うかいのお店を知らないお客様でも入りやすいメニューを開発・導入し、新規のお客様の取り込みを図ります。

『うかい鳥山』では2019年4月にお客様ご自身で焼き物を楽しんでいただく新メニューを導入しましたが、皆様から高評価をいただき、手応えを感じています。

郊外店といっても一律ではなく、地域再開発により周囲に新しいコミュニティが生まれ、新住民(新たなお客様層)との接点の在り方が課題となっている地域もあります。各店舗が、それぞれの環境変化に応じた方法で研鑽していくことが重要です。

─ 物販事業の成長促進 ─
新しい人の流れが生まれた──
「余韻」からスタートした製菓の成長とブランドの広がり

物販事業は「うかいの余韻をご家庭へ」をコンセプトに、レストランで食後にご提供していた焼き菓子を土産品として販売したことから始まります。2013年に東急田園都市線のたまプラーザに製菓店「アトリエうかい」をオープンし、新事業として本格的にスタートを切りました。2015年には八王子工房を新設し、翌年に食品の安全管理を実践するための国際規格・ISO 22000の認証を取得、2018年には増設に踏み切り量産体制を整えました。この5年間、先行投資を実行して生産体制の整備を進めるとともに味、製法、品質にはこだわってきました。その徹底した姿勢により評判が広がり、ブランド構築につながったと考えています。

事業がスタートした当初は、うかい亭を知る人がアトリエうかいのお菓子を買う「レストランから製菓」の一方向がお客様の流れでした。いまはお菓子からうかいを知り、レストランへ誘客するという逆方向の流れも生まれており、今後は双方向の流れによるシナジーの発揮を目指します。

シナジー発揮を図る取り組みの一環として、2019年4月に『アトリエうかい 阪急うめだ本店』をオープンしました。うかいブランドとして初の箱根越えとなります。新店では大阪、京都、神戸など関西圏はもちろん、関西以西の中国地方や九州地方などのお客様にもブランドを広げられる可能性が高く、アトリエうかいのお菓子を経験した方が東京に来た時に「うかいのレストランに行ってみよう」と思う──そんな流れが生まれることを期待しています。

物販事業は、売上ベースで2017年3億円、2018年7億円、2019年9億円と着実に、しかも大きく成長してきました。しかし、レストランとは全く異なるビジネスモデルであり、参入当時は製菓業界では無名の存在として老舗ブランドと競合していかなければなりませんでした。これまでは戦うための基盤固めの時間でしたが、いまは製菓としてのブランドを構築でき、一層の成長を目指すとともに継続的な利益を追求できる段階に入ったと考えています。販売拠点の拡大も積極的に検討し、2020年3月期はさらに売上を積み上げられる見込みです。

─ ブランド発信 ─
海外とともに国内からも発信──
うかいブランドの相互発信で「商圏1万キロ」の実現を

ブランド発信を目的として、台湾で現地企業との業務提携契約にもとづき2店舗を運営しています。海外展開は、あくまでインバウンドの延長線上と考えており、現段階では、海外で出店を進める予定はありません。ブランド発信による効果はすでに顕在化しており、台湾の店舗を経験して「日本でもうかいのお店に行ってみたい」と日本の店舗に来店するお客様が急速に増えています。

今後は海外からの発信とともに、前述のように国内、特に創業店からの発信にも注力し、海外・国内の相互発信によりグローバルなブランドとして「商圏1万キロ」の実現を目指します。

また、これまでも継続的に実施してきた機内食の監修など、他社とのコラボ企画も積極的に検討していきます。

この1年は、新時代を見据え既存店の強化に注力

これから2019年、2020年と国際的なイベントが続き、海外はもちろん、地方から大勢のお客様が首都圏にやってきます。そうしたお客様にうかいの店舗に来ていただき、余韻を感じて「またうかいに来よう」と思っていただけるよう、私たちの思いをしっかり伝えていきたいと考えています。

しかしながら、2020年3月期は10月に予定されている消費税増税の影響も踏まえ個人消費の動向は不透明な状況です。レストラン事業については、いまは郊外店の発信力を高め、お客様のすそ野を広げるための体制づくりに注力する時期と見て、事業計画も保守的に考えています。一方、物販事業に関しては積極的な販売拡大による増収が利益拡大につながると期待しています。

うかいでは、この1年のテーマとして「結(ゆい)」を掲げています。合掌造りで名高い五箇山の集落では共同労働のことを「結」と呼び、様々な労働を助け合って行っていました。当社も「結」の精神を社内で共有し、仲間同士で助け合い、支え合いながら目的に向かって課題を乗り越えていきたいと思っています。

これからも未来への成長に向けた各施策を進め、全従業員が一丸となって業績向上に努めてまいりますので、株主・投資家の皆様には今後とも当社の戦略に一層のご理解をいただき、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

代表取締役社長

大工原正伸